洛中庵 の日記
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緩徐(ゆるやか)な横紋筋融解
2017.02.26
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前回の日記では、私が洛中庵での臨床で何度となく遭遇してきた、「軽微な横紋筋融解症」の一例を書きました。
実は、もう一つ、激症の横紋筋融解症以外に、見逃されがちな危険な横紋筋融解のパターンがあります。これは、長期に渡ってスタチン系のコレステロール低下剤を服用されている方を注意深く観察するとしばしば見受けられます。
このパターンについて、昨年末の新刊書『薬のやめどき』では、第一章の中の〈コレステロールの薬〉の項目において、次のように書かれています。「医師が良く承知している、急性で激烈型の横紋筋融解症は腎不全を起こして致死的であるけれど、ある意味それ以上に怖いのは緩徐な横紋筋融解で、徐々に筋肉が落ちていくパターンである。」(『薬のやめどき』長尾和宏)
まったくその通りだと思います。私は、薬でコレステロールを下げる事を全面的に否定している分けではありません。
けれども、長期に渡る服薬の副作用により身体の支持筋が痩せ細り、結果として行動体力の著しい低下を招いてしまう事を恐れているのです。
高齢者の場合は、最終的には寝たきり状態に誘導するリスクとなります。
このようなリスクのある事を認識されている医師は「残念ながら案外少ない」、というのが私の実感です。
『薬のやめどき』の著者の長尾和宏先生も同書の中で次のように述べておられます。
「実は私はスタチンによる横紋筋融解症の存在は知っていたが、軽症・緩徐例の頻度が高いことを数年前まで恥ずかしながら知らなかった。だから患者さんに「この筋肉痛は副作用でしょうか?」と聞かれて、「副作用は稀だしもっと強烈です。ですから、おそらく違うでしょう」と答えていた時期がある。今思い返せば、大変申し訳ないことをしたと反省している。当時は副作用の軽症・緩徐例が多いという事実を知らなかったのだ。(『薬のやめどき』長尾和宏)
大変正直な告白であると同時に、非常に大きな問題提起がなされていると思います。
《 あなたが あなたらしく 輝くように! 》
〈杉浦次郎〉