洛中庵 の日記
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慢性腰痛に向精神薬!?
2013.03.26
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一昨日(2013/03/24)の朝日新聞電子版に私が大変驚いた記事がありました。朝日新聞の紙面にも掲載されていたそうですのでお読みになった方も多いと思います。
以下に転載します。
………………………………腰痛、推定2800万人 40~60代の4割、悩む
【辻外記子】腰痛の人は全国に推定で2800万人いることが、厚生労働省研究班の調査でわかった。40~60代の約4割が悩んでいた。関係学会は、一般的な治療法ごとにお勧め度をまとめた。原因不明の腰痛では、安静よりも運動が効果的で、1カ月以上続く痛みにはマッサージの効果ははっきりしなかった。ストレスなど心理的な影響も腰痛の引き金になると認定した。
厚労省研究班(主任研究者=吉村典子・東大病院特任准教授)は東京や新潟、広島など全国8カ所の住民約1万2千人分のデータを分析した。医師による問診などで、「腰に痛みがある」「1カ月以内に1日以上痛みがあった」人の割合は、60代が4割強でピークだった。40代、50代も4割前後で、70代以上は下がる傾向があった。男女比は4対6だった。
痛み止め、温熱、マッサージ、腰の牽引(けんいん)……。様々な腰痛の治療法、どれが本当に効くのか。日本整形外科学会と日本腰痛学会は、一般的な治療法の信頼度を診療指針にまとめた。白土修・福島県立医科大教授(会津医療センター準備室)らが、国内外の約200の論文を分析した。
腰痛は、背骨のがんや、腰椎(ようつい)骨折、椎間板(ついかんばん)ヘルニア、脊柱管狭窄(せきちゅうかんきょうさく)症などでも起こる。こうした病気が疑われれば、すぐに画像検査をして、もとの病気を治す必要があるという。
一方、こうした病気がなく、原因不明の腰痛は全体の8割以上を占めるという。指針では、こうした腰痛には、抗炎症薬や鎮痛薬などの「薬物療法」が強く勧められた。3カ月以上痛みが続く慢性腰痛では、ストレッチやウオーキングなどの運動もお勧めだ。
また、腰痛にはストレスがよくないと判断された。うつ状態や仕事上の不満、人間関係に悩みがあると、腰痛になったり、治りにくくなったりするとの論文には十分な根拠があったという。このため、慢性腰痛では抗不安薬、抗うつ薬も有効な治療薬に挙げられた。鎮痛薬などが効かず心理的な影響が疑われれば、整形外科医らが処方する。
一方で、安静は必ずしもよくないそうだ。日常生活を続けるほうが、痛みが軽くなり、仕事を休む期間が短くなるという。マッサージや腰の牽引の効果ははっきりした根拠がなかった。いずれも、指針作りの参考にした複数の論文で結論が異なっていた。
白土さんは「多くが悩む腰痛の治療について、統一的な見解が必要だった。正しい理解を広めてほしい」と話す。
(03/24 05:10)
記事の転載は以上…………………………………………
日本整形外科学会と日本腰痛学会が、一般的な治療法の信頼度を診療指針にまとめたものとのこと。
自然療法を中心に臨床に当たっている手技療法家としては、その内容にいくつかの点で意見の相違はあるものの、ある一点の事柄を除いてはそんなに驚くような内容ではありませんでした。
私が驚き、そして呆れてしまった内容とは…
腰痛に心理的なストレスがよくないという事は、今では一般的にもよく知られています。
そこで指針では、鎮痛剤などが効かず心理的な影響が疑われる慢性腰痛に対して整形外科医らが抗不安薬や抗うつ薬を処方する。としています。
これには本当に驚き、そして憤りを通り越して呆れてしまいました。
抗不安薬や抗うつ薬はそんなに簡単に処方して良いものなのでしょうか?
それらは"立派"な向精神薬であり、数々の副作用や禁断症状があり依存性も高い物質であることは精神医療に携わる人ならば当然認知している事です。
慢性腰痛に対して処方すべき薬剤だとは到底思われません。(それも専門外の整形外科医によって)
そもそもストレスの原因が人間関係や仕事上の不満にあるならばそれらを薬剤によって解消・解決しょうと考える事自体がおかしな事です。
そんな事をしていたら社会人のほとんどは向精神薬依存症になってしまうのではないでしょうか?
社会的な活動で発生したストレスは社会的環境が変わったり、それらから生じた問題が解消・軽減したりすれば解決することです。
心理的ストレスを発散したり、ストレスの原因となった問題を解決すべき方法は薬剤の服用以外で行われるべきです。
それら、薬剤の服用以外のストレスの解消法をアドバイスする事も医療者の役目ではないかと考えます。
気持ちの持ち方や視点を変えることにより心理的ストレスが軽減したり解消する場合もあります。それらは、カウンセリングにより可能です。また、外的な環境を変えることが可能ならばまずそれを実行すべきでしょう。
たとえ慢性腰痛の原因が心理的ストレスであったとしても、当然の事その原因の解消・解決は、薬剤によって実現出来るものではありませんし、それらの原因により生じた心理的ストレスそのものについても薬剤による軽減を選択すべきではないと強く思います。
向精神薬の副作用や禁断症状、依存性を決して軽くみてはいけないと考えます。
《 あなたが あなたらしく 輝くように! 》
〈杉浦次郎〉