洛中庵 の日記
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医師は「自分が患者の場合」受けたい治療をするのが基本だと思います。
2013.07.04
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ここ数年、ガンを始め様々な難病の治療について、東洋医学や自然療法的な観点からのアドバイスを求められる事が増えてきました。
先日もいつも洛中庵にご来院頂いているクライアントからご高齢の親御さんのガン治療に関する相談を受けました。
偶然、今日(7月4日)の新聞に私が先日受けた相談とそっくり同じケースの記事が掲載されていました。転載致します。
■【ゆうゆうLife】高齢期のがん治療 どこまで 体力や状態の個人差大(2013/07/04 07:57)
高齢でがんになったとき、どこまで治療するかは個々人の体調や状態によって判断が分かれる。現役世代に比べて体力や全身状態に個人差が大きく、後遺症の程度もよく分かっていない。患者もどこまで治療するか、人によって考えが異なる。ガイドラインを一律に適用できず、医者も患者も悩み多いのが現実だ。(佐藤好美)
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東京都大田区に住む小山章さん(90)=仮名=は昨年秋、区のがん検診を受けて胃がんが見つかった。総合病院で精密検査をしたところ、医師に「これは全摘(胃の全部摘出)ですね」と告げられた。
小山さんは「そりゃ、大変だと思いました。年も年だから寿命だってあるのに、胃を全部取ったら、食事もなかなかできなくなる。他の方法はないのかと思いました」と言う。考えあぐねて別の病院でも診断を受けた。
2カ所目の病院では、医者が小山さんの心臓が悪いことを懸念し、手術には消極的だった。「年を取った人は何もしない人もいますよ。何もしなくても2、3年は大丈夫ですから」と言われた。
「全部摘出」と「何もしない」の両極端の選択肢を示され、小山さんは困惑。「画像には映っているし、あると分かっていて放置するのも気持ちが悪い。でも、2カ所目の病院の判断は心臓を診る医者がいなかったせいもあると思う。心臓も診られる病院を紹介してもらって決めようと思いました」
3カ所目の大学病院では、医師はまず、循環器科にかかることを勧めた。そこで「心臓の手術に耐えうる」と太鼓判を押された小山さんはまず、心臓にステントを入れる手術を受けた。
胃の手術はそれから2カ月後。小山さんは「なるべく小さく切ってほしいと頼みました。どう考えても、100歳まで生きることはない。小さく切って、うまくいけば2、3年が5年になるかもしれない。それでいい」。「局所切除」を受け、退院した。
「前はフィットネスクラブでちょっと歩くと息が上がっていたが、今は10分歩いても大丈夫。食事も少なめだが、手術から1週間程度で家族と同じものを食べました。全摘だったら、大変だったと思いますね」と話している。
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■スタンダードなく医療現場にも迷い
測りきれない悪影響
がんの手術では一般に、腫瘍の位置や大きさによって、科学的根拠に基づいて生存率の高い治療法が決まっている。
しかし、東京大学大学院医学系研究科の瀬戸泰之教授(消化器外科)は「高齢者の胃がんの手術には、スタンダード(基準)がない」と言う。手術で胃を失った後の生活への影響が測りきれないからだ。
手術で胃を失えば食事量や消化吸収能力が落ちるが、最近では免疫力や食欲も落ちることが予想されている。瀬戸教授は「現役世代は、消化吸収能力などが落ちても乗り越えていける。個人差はあるが、75歳くらいでも手術の手控えはしない。治すことを優先するからだ。だが、食欲や免疫力も落ちることが予想されるので、80歳より上くらいになると、胃がないことで他の病気にもかかりやすいことが推測される。実は胃を残すメリットは大きいのではないか」。
5年生存率は指標か
迷うのは、80歳以上の人には治療の科学的根拠がないからだ。治療の安全性や有効性を調べる「臨床試験」は80歳までの人が対象。だから、それを基に決めるガイドラインが80歳以上の人にあてはまるのかどうかよく分からない。瀬戸教授は「がん治療は5年生存率で結果を見るが、例えば、85歳の人に5年生存率でものを言っていいのかどうかも分かっていない」と話す。
本当は何が良いのかよく分からないため、現場は迷いつつ治療にあたる。瀬戸教授のグループの山下裕玄(ひろはる)講師らは同じ医局の医師16人にアンケートを実施した。内容は、患者が50歳の場合と80歳の場合で、早期上部胃がんの術式が異なるかどうか。内視鏡写真を示して「ベストな治療法」を聞いたところ、「患者が50歳の場合」は胃の上部を大きく切除する「噴門側胃切除」を選ぶ医師が最多。しかし、「患者が80歳の場合」は、ガイドラインにはないが、体に負担の少ない「内視鏡治療」を選ぶ医師が最多だった。
さらに驚くべきことに、「自分が患者の場合」の希望を聞くと、「患者が80歳の場合」と同じ控えめな治療法が最多だった。今のガイドラインは「救命」が判断基準になるので、がん治療後にやってくる「生活の質」があまり考慮されていないことが想起される。
だが、「生活の質」を測り、それをガイドラインに反映させることは極めて難しい。質を測る指標が決めきれないからだ。
ガイドライン作成へ
瀬戸教授らは今年、30病院程度を対象として、80歳以上の患者に実際、どんな胃がん手術を行ったかの調査を実施する予定だ。ガイドラインより控えめな手術が多いことが予想されるが、実際のデータを基に、本当は何が良いかを検討したい意向。瀬戸教授は「高齢者のためのガイドラインは必要だ。今はそれがないので現場が大変に苦労している。治療後の生活の質も考慮したガイドラインの作成は非常に難しいが、少なくとも高齢者にはつくる必要がある。将来的には現役世代についても検討が必要かもしれない」と話している。
以上、産経新聞記事(グラフも)より
そもそも、私は現在のガン治療のスタンダード(基準)自体に不支持の立場です。しかしながら、現状ではガン治療を要する方のほとんどは病院でスタンダード治療を受けられます。(高齢期のガンにはスタンダードがないと書かれていますが、多くの場合実際には高齢期以前の年齢での"スタンダードに準ずる内容"での治療が行われています。)
個人的にはあくまでも不賛成ですが、現状では無理もない事だとある意味達観しています。(さほど遠くない将来、心身への負担の極めて少ない自然療法的なガン治療が、医師患者側双方に広く受け入れられるものと確信しています。)
ですから、現状で記事にあるようなケースで相談を受けた場合は、可能な限り「控えめな治療法」を選択されるようにアドバイスしています。
そのような治療を受けた上で、『栄養代謝療法や鍼灸治療等を含めた自然療法を取り入れ、生活の質を維持・向上させて行きましょう!』と提案しています。
さて、いろいろと考えさせられる記事ですが、一番印象的なのは消化器外科の医師達(おそらく老年期には達していない働き盛りの医師達)がアンケートに答えて、「自分が患者の場合」の治療の希望は、患者が80歳の場合と同じ「控えめな治療法」であるとしている事です。
この事について記事は、「驚くべきこと」と書いていますが、私は別段驚くべきことだとは思いません。
『よく正直に答えたなぁー』というのが率直な感想です。
この事はガン治療について私が常々考えている事と関連します。
医師は患者に対して常に、「自分や自分の最愛の人が患者の場合」と同じように考え治療を進めていく事が必要だと思います。もしくは、少なくともその治療法の説明だけでもするべきだと思っています。
その事なくして、現在多くのガン患者とその家族がいだいている"ガン医療への根強い不信感"をぬぐうことは出来ないと考えます。
医師はあくまでも、『治療を受ける側の立場に立って日々の臨床にあたっていただきたい』と強く思っています。
先日もご相談者には、『主治医を選ぶ際は学識・技術もさることながら、患者に対して思いやりをもって治療にあたってくれる医師。最低限、自身が患者の立場になったとして「自分が受けたい治療」を勧めてくれるような医師を選んで下さいね』とお伝えしました。
《 あなたが あなたらしく 輝くように! 》
〈杉浦次郎〉
