洛中庵 の日記
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抗がん剤は効く?効かない?
2014.03.05
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「抗がん剤は効かないのですか?」
がんのクライアントやそのご家族の方から最近良く頂く質問です。
質問者のほとんど全員の方が『患者よ、がんと闘うな』、『抗がん剤は効かない』、『がん治療で殺されない七つの秘訣』その他多数の著書を著された、慶応大学病院放射線科講師の近藤誠医師の意見を著書やテレビ等のメディアを通して見聞きされています。
質問者には私は大体次のようにお答えしています。
抗がん剤でがんは治らないということは、医療者向けのがんの専門書をきちんと読めばちゃんと書いてあります。この事については、別に近藤誠医師が異端の説を唱えておられる訳ではありません。
また、近藤誠医師もおっしゃっていますように、急性白血病や悪性リンパ腫等の血液のがんや睾丸のがん、子宮絨毛(じゅうもう)がん、各種の小児がん等の一部のがんは抗がん剤で治る可能性があります。
このことも専門書には当然ちゃんと書かれています。
つまり、裏返して言えばほとんどの固形がんは抗がん剤では治らないという事です。
それではなぜ、がんの治療に抗がん剤が使われているのかと言えば、進行がんの場合は延命効果や症状の緩和を"期待"するからです。決してがんを治す目的で抗がん剤を使うわけでは無いのです。
そのあたりの事を医師は治療を受けるご本人とご家族にきちんと伝える義務があると思います。
これに関連して、『がん化学療法と患者ケア』(医学芸術社)という医療者向けのテキストには次のような記載があります。
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●「効く」と「治る」の違い
抗がん剤に関して、よく「奏効」という言葉が使われる。こう聞けば多くの患者は「効く→治る」と認識するが、奏効というのは「30%以上の腫瘍縮小効果がある」ことを意味する。すべての患者に有効なわけではない。医療者は患者に対して、その点を曖昧にしてはいけない。
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まったく同感です。
けれども実際の多くのがん治療の現場ではこのことがどうもあまり守られていないようです。
それでは、治療を受けるご本人やそのご家族をミスリードしてしまいます。
このことが今のがん治療の現場で数々の悲劇を生み出している原因の一つになっていると考えています。
私は「抗がん剤は効くのか、効かないのか」と質問された時は大体以上のような話をしています。
※写真は『がん診療レジデントマニュアル』(国立がん研究センター内科レジデント 編/医学書院)第5版
このテキストの中にも抗がん剤の"効果"について、「■各種悪性腫瘍に対するがん薬物療法の有効性」として解説されています。
《 あなたが あなたらしく 輝くように! 》
〈杉浦次郎〉
