洛中庵 | 日記 | がんの「早期発見」の落とし穴

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洛中庵 の日記

がんの「早期発見」の落とし穴

2014.09.04

少し前のニュース(8月19日頃)で、国立がん研究センター(東京都中央区)が血液から乳がんや大腸がんなど13種類のがんを発見できる診断システムの開発を始めるというものがありました。


新聞、テレビ等のメディアでも一斉に大きく取り上げられましたのでご存知の方も多いかと思います。


以下は読売新聞電子版での記事。

【血液検査での早期発見手法、開発へ…がん13種】(8/19)


 国立がん研究センターは18日、国内の研究機関や企業と共同で、血液検査で早期にがんの診断ができる新手法の研究開発を始めると発表した。
 がんになると、体内で「マイクロRNA」という物質の種類や量が変化することを利用する。
 参加するのは、経済産業省所管の独立行政法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」、東レなどの企業や研究機関。マイクロRNAは、遺伝子の機能を調節する非常に小さい物質。近年、がんによっては、特定のマイクロRNAが多く検出されることが分かってきた。この物質は血液中で一定期間分解されないため、検査に利用できると判断した。
 研究では、乳がんや膵臓(すいぞう)がんなど13種類のがんを対象に、6万5000人分の血液を解析し、がんとマイクロRNAとの関連を調べる。研究期間は5年。同センター研究所の落谷(おちや)孝広・分子細胞治療研究分野長によると、乳がんでは特定のマイクロRNAを調べると9割以上の正確さでがんを判定できるという少人数での研究成果も出ており、まずは乳がんの検査法の開発を目指すという。
 がんの血液検査では、現在、がんになると増えやすいたんぱく質などを調べる「腫瘍マーカー」という検査があるが、がんの早期から検出できるとは限らず、がんでない患者も陽性となるなど課題もある。落谷分野長は「血液検査で高い精度で早期がんが見つけられれば、今まで見つけにくかった種類のがんの早期治療にもつなげられる」と話す。

ー記事の転載は以上ー

このニュースは、洛中庵でもよく話題になっています。


確かに、検査を受ける側の身体への負担が少なく、安価で迅速、正確な判定が可能となれば、がんの早期発見につながり、ある一面、非常に意義のあるのは事実でしょう。


けれども、本当に手放しで喜んで良い話なのでしょうか? がんの「早期発見」は本当に良い事ばかりなのでしょうか?



私は大変疑問に思っています。



一昨日(9月2日)の産経新聞電子版の連載記事【家庭医が教える病気のはなし】(武蔵国分寺公園クリニック院長・名郷直樹医師 担当)でもこんな指摘がなされていました。



■【家庭医が教える病気のはなし】(66)「採血でがん13種類判定」は朗報か(2014/09/02 09:26)
 がんの早期発見の話を続けて書いていたら、格好のニュースが飛び込んできました。新エネルギー・産業技術開発機構と国立がん研究センターなどが共同して、1回の採血で13種類のがんの早期発見ができる簡便な方法の開発に着手するというのです。この検査法は当然、がん検診での利用が想定されています。

 少量の血液を取るだけで簡単に早期がんが調べられる、夢のような検査法の実用化という喜ばしいニュース、どのメディアもそういう感じで報じています。しかし、そんな単純な話でないのは、この欄で取り上げてきた通りです。

 より多くの人が、より精度の高い検査で簡単に検診を受けられることで、がんの見逃しは減るかもしれませんが、がんでない人にがんの疑いをかけたり、がんと誤診してしまったりという危険がどうしても高くなります。

 例えば、100人のがんの人で99%をがんと診断し、100人のがんでない人のうち99%をがんでないと正しく診断するような検査を想定しましょう。がんの危険が少ない30、40代でも多くの人がこのがん検診を受けたとします。若い人では1万人に1人くらいしかがんがありませんが、この検査が陽性でがんの疑いと診断されても、その中で本当にがんであるのは100人に1人にすぎません。残りの99人(99%)は偽陽性なのです。

 不思議に思われるかもしれませんが、「ベイズの定理」という統計手法から導き出される確かな数字です。がんのある人もない人も、それぞれ99%の確率で正しく診断するという検査は、検査が陽性の場合におおよそ100倍、がんの可能性が高くなる検査ということです。つまり、1万分の1のがんの可能性が、100倍の100分の1になるというわけです。がんの可能性が100分の1ですから、本当のがんは1%にすぎないのです。

 より早期で見つける分、過剰診断の問題はさらに大きくなります。現状でも多くの過剰診断が問題となっている前立腺がんや乳がんの検診では、さらに早期の発見が可能とされるこの方法で、過剰診断がより多くなる可能性が高いと思われます。特に、高齢者では余命20年の人に対して、進行がんになるのに30年かかる早期がんを見つけるというような危険が高くなりますから、若い世代に対する偽陽性だけでなく、高齢者過剰診断の問題も大きいのです。

 早期発見はいいことばかりではない。このことが研究の中で考慮されるかどうか注視していきたいと思います。(武蔵国分寺公園クリニック院長・名郷直樹)




『がんの早期発見はいいことばかりではない。』 まったく同感です。

過剰診断は、当然、過剰治療につながります。

そこに大きな落とし穴が潜んでいると考えています。












《 あなたが あなたらしく 輝くように! 》












〈杉浦次郎〉

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